ここでは、私なりの水草水槽デザインの方法についてご紹介したいと思います。 水草水槽のセットアップ方法については、様々なところで紹介されており、底床の敷き方から各種機器類のセット、植栽の方法が写真入などで解説されています。 しかし、水草の植え方や流木、石の配置については、例えば「不等辺三角形になるように配置する」、「後景の草から植える」等のノウハウ、テクニック的な解説はたくさんありますがそこに行くまでの過程、「何故この水草を使用するのか」「何故流木を使用するのか」というような、その水景を作る背景、コンセプトというようなことからひもといて解説されているものはあまり多くないと思います。 要するに、ある製品、例えば自動車なら自動車の製造工程は解説しているのですが、その車がどのような人をターゲットとして開発されているのか、そのキーワードは何なのか、キーワードに基づきどのような点に注意してデザインされたのか、といった設計図が完成するまでの工程について解説されたものがあまり無いのではないか、ということです(単に私が知らないだけかもしれませんが…)。 ノウハウ、テクニックは水景を作成する上での手段、方法であって、これらのことを知っておくのはもちろん重要なことではありますが、作成するためには水景の設計図が必要であり、この設計図をどの程度まで描いておけるか、ということで水景の出来映えがある程度決定してしまうと思います。 |
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「何故このデザインにするのか」ということは、そのデザインによって表現したい元のものがあるはずです。上記の例でいえば「開発の狙い」ということになります。 水景作りでは「どんな水景にしたいのか、何を表現したいのか」というイメージの方向性を大雑把に掴む、ということです。 私の場合、イメージが湧くのはやはり、アクアジャーナルやその他の雑誌、写真集に掲載されている 風景写真を見ている時です(逆に特定の水草やアイテムからイメージを作ることもありますが、イメージ作りという点では本質的に変わりのないことです)。 その写真を見て受けた「日本庭園」とか「アマゾン」という印象が「こんな水景を作ってみたい、表現してみたい」というイメージとなります。 |
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イメージを掴んだら、次にそのイメージを絞り込んで行きます。「日本庭園」とか「アマゾン」ということで大雑把なイメージはできました。しかし、これだけではまだ漠然としていますのでイメージを絞り込み、具体的に考えることができるようにする必要があります。前述した自動車の例でいえばイメージをいろいろなキーワードに置き換えて行くということです。 「日本庭園」を例にとってみると次のようなキーワードが浮かびました。 紅葉、庭石、苔、岩組、枯山水、砂紋 同様に「アマゾン」では以下のようなキーワードです。 ネグロ川、ブラックウォーター、枯れ葉、流木、カージナルテトラ、トニナ どうでしょう。何となく具体的になってきましたよね。この辺は人によって感じ方や考え方は様々ですので、いろいろなキーワードが出てくると思います。 |
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次のステップは、キーワードを具体的な素材、水草や収容魚の種類、使用するアイテム(流木・石・ 底床材)に落とし込んで行きます。 「日本庭園」の例では、次のように落とし込んでみました。 紅葉 → 緑色の水草の中にワンポイントとして赤系水草を使用 庭石・岩組 → 青龍石の岩組 苔 → ウィローモス 枯山水・砂紋 → 川砂(ジャレコ) 「アマゾン」では以下のような感じです。 ネグロ川 → アクアソイル・アマゾニア ブラックウォーター・枯れ葉 → リオネグロリーフ 流木 → ブラックスリムウッド カージナルテトラ、トニナ → そのまま 使用する水草については、(株)ピーシーズから出版されている「レイアウト作成・水草育成図鑑」等 の書籍を参考にして水景のイメージ、キーワードにあう種類をセレクトすれば良いと思います。 収容魚についても同様に図鑑等からセレクトします。 |
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Step1〜4によってイメージが具体化され、使用する素材も一応セレクトしました。 次には、これらの素材をどのようにレイアウト(配置)するのかを考え、紙に鉛筆などでラフスケッチを描いて出来上がりの様子をシミュレーションしてみます。スケッチしているうちに、いろいろ思いつくことも出てくるので、水草の種類を変更したり、追加したりする場合もありますが、スケッチを何枚か描いてみて、比較してみるのも面白いと思います。 この段階まで来ると、「始めに」でお話した「不等辺三角形になるように配置する」とか「ボリューム的に1:1.6になるようにする」といったノウハウ、テクニックを適用することにより、中心となる一つのものを決めれば必然的に他のものの配置やボリュームが決まってきます。例えば、「葉の形や色が似たものは隣りあわないようにする」とか「後ろは高く、前は低く」とかいうことです。 あとは、いろいろ紙の上でシミュレーションをして自分の一番気に入ったものを最終的な設計図にすればOKです。 |
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1〜5のことをまとめてみると、次のようになります。 1. イメージを掴む。 2. イメージをキーワードにより具体化する。 3. キーワードを具体的な素材に落とし込む。 4. 構図のいろいろな定石、約束事に則って素材を配置しスケッチを描く。 (場合によってはわざと定石を少しはずした部分を作ると隠し味になって良いと思います。 ただし、多用はダメダメ) 5. 気に入ったものを設計図とする。 |
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後は、設計図に基づき、素材を調達しセッティングします。ただし、イメージどおりの素材が見つからない場合があります。 水草はインターネット通販などにより、今ではかなりの種類が調達可能となりましたが、流木、石については実物を見ないと形、大きさがイメージに 合うかどうか判断つかないので通販で、という訳にもいかないのが難しいところです。 お店に行った際に気に入ったものがあれば問題ないのですが、普段から気に入ったものがあれば購入しストックしておくか、ある程度妥協する、といった ことも必要かもしれません。 以上、私が普段考えていることを書いてみました。 私の方法がベストということではありませんし、皆さん色々なお考えや方法をお持ちだと思います。 この件について皆さんの「私はこうしている」とか「こうした方がもっと良い」といったご意見やご感想、レイアウトのノウハウ、TIPS等を掲示板、メールなど で是非お聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。 |